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科目別憲法民法刑法
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憲法条約締結後に国会が当該条約を修正して承認することができるかについて、これを肯定する見解によれば、当該条約は、その内容を修正して承認する旨の国会の議決により、当該修正議決に従った内容どおりに改訂されたことになる。憲法この問題の模試受験生正解率 55.5%結果正解解説憲法73条3号ただし書の「承認」をめぐり、国会が条約を修正して承認することができるかについて、肯定説(さらに、事前承認の場合に限って認められるとする説と、事後承認の場合にも認められるとする説とに分かれる。)と否定説に分かれている。肯定説は、同61条・60条2項が両院協議会の手続を要求しているのは、両院の妥協により条約を修正して承認する可能性のあることを想定したものと解されることなどを根拠としている。もっとも、肯定説に立ったとしても、条約は、その内容を修正して承認する旨の国会の議決によって、その修正議決に従った内容どおりに改訂されたことになるのではなく、国会が修正した内容のものを締結するよう内閣に対して交渉を義務付けるという効果が生じるだけである。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)325~326頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)206~208頁、426~428頁。
新基本法コメ(憲法)388~389頁。 -
民法A、B及びCが甲土地を共有している場合に関して、Aは、甲土地の自己の持分を第三者に対して譲渡する場合、B及びCの同意を得る必要はない。民法この問題の模試受験生正解率 83.4%結果正解解説明文の規定はないが、共有持分権は所有権と同様の性質を有すること及び処分を認めても他の共有者の持分権に影響を与えないことから、各共有者は、自己の持分権を自由に処分することができるとされている。よって、本記述は正しい。参考佐久間(物権)206~207頁。
平野(物権)358頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)158頁。
新基本法コメ(物権)118頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、従犯の刑は、正犯の刑を減軽すると規定されているが、従犯に言い渡される具体的宣告刑が、正犯に言い渡される具体的宣告刑より常に軽くなるとは限らない。刑法この問題の模試受験生正解率 75.0%結果正解解説刑法63条は、「従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。」と規定しているところ、同条にいう「正犯の刑を減軽する」とは、正犯に対する法定刑に法律上の減軽を施した上で、従犯の処断刑を定めるという趣旨であると解されている。したがって、従犯には、正犯に言い渡される具体的宣告刑より重い刑が言い渡されることもあり得る(大判昭13.7.19)。よって、本記述は正しい。参考大谷(講義総)450頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)356~357頁。
条解刑法265頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、公職選挙における立候補の自由は、憲法第15条第1項の保障する重要な基本的人権の一つであるから、労働組合が、公職選挙における統一候補を決定し、組合を挙げてその選挙運動を推進している場合であっても、組合の方針に反して立候補をしようとしている組合員に対し、立候補を思いとどまるよう、勧告又は説得することは許されない。憲法この問題の模試受験生正解率 75.6%結果正解解説判例は、労働組合が市議会議員選挙に向けて統一候補を決定したところ、その決定に反して当該選挙に立候補した組合員を、当該労働組合の執行部役員が統制違反者として権利停止処分にしたことなどが公職選挙法違反に当たるとして起訴された事例において、「憲法28条による労働者の団結権保障の効果として、労働組合は、その目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内において、その組合員に対する統制権を有」するが、この「労働組合が行使し得べき組合員に対する統制権には、当然、一定の限界が存するものといわなければならない。殊に、公職選挙における立候補の自由は、憲法15条1項の趣旨に照らし、基本的人権の一つとして、憲法の保障する重要な権利であるから、これに対する制約は、特に慎重でなければならず、組合の団結を維持するための統制権の行使に基づく制約であっても、その必要性と立候補の自由の重要性とを比較衡量して、その許否を決すべきであ」るとした上で、「統一候補以外の組合員で立候補しようとする者に対し、組合が所期の目的を達成するために、立候補を思いとどまるよう、勧告または説得をすることは、組合としても、当然なし得るところである。しかし、当該組合員に対し、勧告または説得の域を超え、立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由に当該組合員を統制違反者として処分するがごときは、組合の統制権の限界を超えるものとして、違法といわなければならない」としている(最大判昭43.12.4 三井美唄労組事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕144事件)。したがって、労働組合は、組合の方針に反して立候補をしようとしている組合員に対し、立候補を思いとどまるよう、勧告又は説得することは許される。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合、建物の賃貸借契約が期間の満了によって終了した場合において、賃借人が造作買取請求権を行使し、賃貸人が賃借人に対して建物の引渡しを請求したときは、賃借人は、造作代金の支払と建物引渡しとの同時履行を主張することができる。民法この問題の模試受験生正解率 68.3%結果正解解説判例は、建物と造作代金とは対価関係にないことを理由として、建物の引渡しと造作代金の支払とは同時履行の関係にないとしている(大判昭7.9.30、最判昭29.7.22)。よって、本記述は誤りである。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)220~221頁。
平野(債各Ⅰ)271頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、警察官から提示を求められたときに備え、偽造された自動車運転免許証を携帯して自動車を運転した場合、偽造公文書行使罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 33.7%結果正解解説判例は、偽造公文書行使罪の「行使」について、「文書を真正に成立したものとして他人に交付、提示等して、その閲覧に供し、その内容を認識させまたはこれを認識しうる状態におくことを要する」とした上で、「自動車を運転する際に偽造にかかる運転免許証を携帯しているに止まる場合には、未だこれを他人の閲覧に供しその内容を認識しうる状態においたものというには足りず、偽造公文書行使罪にあたらない」としている(最大判昭44.6.18 刑法百選Ⅱ〔第8版〕99事件)。よって、本記述は正しい。参考西田(各)391~392頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)391~392頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、集合住宅でのビラの戸別配布のために、一般に人が自由に出入りすることが予定されていない当該集合住宅の共用部分及びその敷地に管理権者の意思に反して立ち入ることは、たとえ表現の自由の行使のためであるとしても、管理権者の管理権及びそこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものであるから、このような立入りについて刑法第130条前段の罪に問うことは、憲法第21条第1項に違反しない。憲法この問題の模試受験生正解率 80.5%結果正解解説判例は、政治的意見を記載したビラを公務員宿舎の共用部分である各室の玄関ドアの新聞受けに投函する目的で管理権者及び居住者の承諾を得ずに当該宿舎内に立ち入り、当該ビラを投函した行為について、刑法130条前段を適用することの合憲性が問題となった事例において、「被告人らが立ち入った場所は、防衛庁(現:防衛省)の職員及びその家族が私的生活を営む場所である集合住宅の共用部分及びその敷地であり、自衛隊・防衛庁当局がそのような場所として管理していたもので、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない。たとえ表現の自由の行使のためとはいっても、このような場所に管理権者の意思に反して立ち入ることは、管理権者の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。したがって、本件被告人らの行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは、憲法21条1項に違反するものではない」としている(最判平20.4.11 憲法百選Ⅰ〔第7版〕58事件)。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合、Aは、その所有する甲土地をBに売却し、その旨の所有権移転登記が未了の間に、Bは、甲土地をCに売却した。その後、A及びBがAB間の売買契約を合意解除した場合、Cは、所有権移転登記をしなければ、Aに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができない。民法この問題の模試受験生正解率 70.4%結果正解解説判例は、A名義の登記がなされているA所有の土地が、AからB、BからCへと順次売買され、いずれについても所有権移転登記がなされていない間にAB間の売買が合意解除された事例において、遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することができないことは民法545条1項ただし書の定めるところであり、合意解除は、同項の解除ではないが、それが契約の時にさかのぼって効力を有する趣旨であるときは法定解除と別に扱う理由もないから、そのような合意解除も第三者の権利を害することはできないが、その第三者を同177条にいう第三者の範囲から除外し別に扱うべき理由もないから、その第三者が不動産の所有権を取得した場合は、その所有権について不動産登記を経由していることを要し、もし登記を経由していないときは第三者として保護されないとしている(最判昭33.6.14)。よって、本記述は正しい。参考佐久間(物権)91~94頁。
平野(物権)116頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)48~49頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、乙の同意を得て、差押えを受けている乙所有の自動車に放火してこれを焼損したが、公共の危険は生じなかった。この場合、甲には、建造物等以外放火罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 58.7%結果正解解説他人が所有する自動車を放火する場合は、刑法110条1項の成立が問題となるところ、その者の同意がある場合には、財産権侵害がなく、自己所有物との均衡を考えて、同条2項が適用される。ただし、その物が差押えを受けている場合には、同115条により同110条1項の成立が問題となる。もっとも、建造物等以外放火罪(同条)が成立するためには、その客体が他人所有物(同条1項)、自己所有物(同条2項)のいずれであっても、「公共の危険」の発生が必要である。本記述では、甲は乙所有の自動車に放火してこれを焼損したが、公共の危険が生じていない。したがって、甲には、建造物等以外放火罪は成立しない。よって、本記述は誤りである。参考西田(各)329~330頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)362頁。
条解刑法367~369頁。
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憲法内閣は法律を誠実に執行する義務を負うが、他方、内閣の構成員である国務大臣は、憲法尊重擁護義務を負うため、内閣が違憲と判断する法律が成立した場合には、その執行を免れる。憲法この問題の模試受験生正解率 76.0%結果正解解説憲法73条1号は、内閣が「法律を誠実に執行」する旨定めている。これは、たとえ内閣の賛成できない法律であっても、法律の目的にかなった執行を行うことを義務付ける趣旨である。他方、内閣の構成員である国務大臣は、憲法尊重擁護義務を負う(同99条)。しかし、法律が違憲かどうかについては、国会の判断が内閣のそれに優先するとされている。すなわち、国会で合憲であるものとして制定した以上、内閣はその判断に拘束される。したがって、内閣が違憲と判断する法律が成立した場合でも、その執行を免れることはない。よって、本記述は誤りである。
なお、最高裁判所が法律を違憲と判断した場合には、内閣はその法律の執行を停止することができると解されている。参考佐藤幸(日本国憲法論)541~542頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)205頁。 -
民法留置権者及び抵当権者は、いずれもその目的である不動産の競売を申し立てることができる。民法この問題の模試受験生正解率 43.3%結果正解解説留置権は、優先弁済的効力を有しないため、留置権者は、担保権の実行としての競売手続(民事執行法180条1号、190条1項)をとることはできないが、競売手続をとることは認められている(形式的競売 同195条)。また、抵当権は、優先弁済的効力を有することから、抵当権者は、担保権の実行としての競売手続をとることができる。よって、本記述は正しい。参考内田Ⅲ554~555頁、667頁。
道垣内(担物)40頁、200頁。
松井(担物)151~152頁。 -
刑法ある刑罰法規につき、条文の文言を、語義の可能な範囲内で通常の意味よりも広げて解釈することは、許されることがある。刑法この問題の模試受験生正解率 74.8%結果正解解説刑罰法規で規定されていない事項に対し、これと類似する性質を有する事項に関する刑罰法規を適用することは、罪刑法定主義の派生原理である法律主義及び事後法の禁止に反するものであり許されない(類推解釈の禁止)。もっとも、このことは、文理解釈しか許されないことを意味するものではなく、法の予想し得る限度まで、いかにあるべきかを考えて実質的な解釈をすることまで禁止するものではない。そのため、ある刑罰法規につき、条文の文言を、語義の可能な範囲内で通常の意味よりも広げて解釈することが許されることがある(拡張解釈)。よって、本記述は正しい。参考山口(総)13~14頁。
大谷(講義総)64~66頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)21~22頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、我が国における宗教事情の下で信教の自由を確実に実現するためには、単に信教の自由を無条件に保障するのみでは足りず、国家といかなる宗教との結び付きをも排除するため、政教分離規定を設ける必要性が大であったことに鑑みると、憲法は、政教分離規定を設けるに当たり、国家と宗教との完全な分離を理想とし、国家の非宗教性ないし宗教的中立性を確保しようとしたものと解すべきである。憲法この問題の模試受験生正解率 55.0%結果正解解説判例は、市が体育館建設に当たり、神式による起工式(地鎮祭)を行い、そのための費用を市の公金から支出したことが、憲法20条3項、89条に違反するか否かが争われた事例において、「憲法は、明治維新以降国家と神道とが密接に結びつき……種々の弊害を生じたことにかんがみ、新たに信教の自由を無条件に保障することとし、更にその保障を一層確実なものとするため、政教分離規定を設けるに至ったのである。元来、わが国においては、キリスト教諸国や回教諸国等と異なり、各種の宗教が多元的、重層的に発達、併存してきているのであって、このような宗教事情のもとで信教の自由を確実に実現するためには、単に信教の自由を無条件に保障するのみでは足りず、国家といかなる宗教との結びつきをも排除するため、政教分離規定を設ける必要性が大であった。これらの諸点にかんがみると、憲法は、政教分離規定を設けるにあたり、国家と宗教との完全な分離を理想とし、国家の非宗教性ないし宗教的中立性を確保しようとしたもの、と解すべきである」としている(最大判昭52.7.13 津地鎮祭事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕42事件)。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合、債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まる場合において、第三者がその選択権を有するときは、その選択の意思表示は、債権者及び債務者の双方に対してしなければならない。民法この問題の模試受験生正解率 52.9%結果正解解説選択債権とは、2個以上の異なった給付を選択的に目的としている債権であって、選択によってそのうちの1つが債権の目的となるものをいう。そして、民法409条1項は、第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってするとしている。よって、本記述は誤りである。参考内田Ⅲ78~79頁。
潮見(プラクティス債総)50頁、52頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、中止犯が成立する場合は、必ずその刑が免除される。刑法この問題の模試受験生正解率 90.9%結果正解解説中止犯とは、犯罪の実行に着手したが「自己の意思」によって中止した場合をいい、その刑は必要的に減軽又は免除される(刑法43条ただし書)。よって、本記述は誤りである。参考大谷(講義総)382頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)281~282頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、憲法第34条前段の弁護人依頼権は、単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまり、被疑者が弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障するものではない。憲法この問題の模試受験生正解率 82.7%結果正解解説判例は、刑訴法39条3項の規定(接見指定)が憲法34条等に違反するかどうかが争われた事例において、「憲法34条前段は、「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。」と定める。この弁護人に依頼する権利は、身体の拘束を受けている被疑者が、拘束の原因となっている嫌疑を晴らしたり、人身の自由を回復するための手段を講じたりするなど自己の自由と権利を守るため弁護人から援助を受けられるようにすることを目的とするものである。したがって、右規定は、単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく、被疑者に対し、弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障している」としている(最大判平11.3.24 憲法百選Ⅱ〔第7版〕120事件)。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合、重婚の場合において、後婚が離婚によって解消されたときは、特段の事情のない限り、後婚が重婚に当たることを理由としてその取消しを請求することができない。民法この問題の模試受験生正解率 55.8%結果正解解説重婚の禁止の違反は婚姻の取消原因である(民法744条1項、732条)。もっとも、判例は、「重婚の場合において、後婚が離婚によって解消されたときは、特段の事情のない限り、後婚が重婚にあたることを理由としてその取消を請求することは許されないものと解するのが相当である」としている(最判昭57.9.28 民法百選Ⅲ〔第3版〕4事件)。その理由として、同判決は、「婚姻取消の効果は離婚の効果に準ずるのであるから(民法748条、749条)、離婚後、なお婚姻の取消を請求することは、特段の事情がある場合のほか、法律上その利益がない」ことを挙げている。よって、本記述は正しい。参考窪田(家族法)35~36頁。
前田陽ほか(民法Ⅵ)56頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、わいせつの目的をもって未成年者を誘拐した場合、わいせつ目的誘拐罪のみが成立し、未成年者誘拐罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 59.9%結果正解解説判例は、刑法225条所定の目的をもって未成年者を誘拐したときは、同条の罪のみが成立するとしている(大判明44.12.8)。よって、本記述は正しい。参考山口(各)94頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)58頁。
大コメ(刑法・第3版)(11)539頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、学生は、大学における不可欠の構成員として、学問を学び、教育を受けるものとして、その学園の環境や条件の保持及びその改変に重大な利害関係を有する以上、大学自治の運営について要望し、批判し、あるいは反対する当然の権利を有する。憲法この問題の模試受験生正解率 59.6%結果正解解説最大判昭38.5.22(ポポロ事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕86事件)は、「大学の学問の自由と自治は、大学が学術の中心として深く真理を探求し、専門の学芸を教授研究することを本質とすることに基づくから、直接には教授その他の研究者の研究、その結果の発表、研究結果の教授の自由とこれらを保障するための自治とを意味すると解される。大学の施設と学生は、これらの自由と自治の効果として、施設が大学当局によって自治的に管理され、学生も学問の自由と施設の利用を認められるのである。もとより、憲法23条の学問の自由は、学生も一般の国民と同じように享有する。しかし、大学の学生としてそれ以上に学問の自由を享有し、また大学当局の自治的管理による施設を利用できるのは、大学の本質に基づき、大学の教授その他の研究者の有する特別な学問の自由と自治の効果としてである」としている。したがって、同判決は、学生を単なる施設の利用者として捉えているにすぎない。よって、本記述は誤りである。
なお、仙台高判昭46.5.28(東北大学事件 教育百選〔第2版〕4事件)は、「学生は、大学における不可欠の構成員として、学問を学び、教育を受けるものとして、その学園の環境や条件の保持およびその改変に重大な利害関係を有する以上、大学自治の運営について要望し、批判し、あるいは反対する当然の権利を有し、教員団においても、十分これに耳を傾けるべき責務を負う」としている。参考芦部(憲法)177~178頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、Aが、Bからその所有する甲土地を譲り受け、引渡しを受けて占有を開始した後、BがCにも甲土地を譲渡し、Cへの所有権移転登記をした場合において、Aは、その後も甲土地の占有を継続し、甲土地の占有を開始した時から民法所定の時効期間を経過したときは、甲土地の所有権を時効取得することができる。民法この問題の模試受験生正解率 75.0%結果正解解説判例は、不動産が売主から第一の買主に譲渡され、その登記がされない間に、その不動産が売主から「第二の買主に二重に売却され、第二の買主に対し所有権移転登記がなされたときは、……登記の時に第二の買主において完全に所有権を取得するわけであるが、その所有権は、売主から第二の買主に直接移転するのであり、売主から一旦第一の買主に移転し、第一の買主から第二の買主に移転するものではなく、第一の買主は当初から全く所有権を取得しなかったことになる」とし、「したがって、第一の買主がその買受後不動産の占有を取得し、その時から民法162条に定める時効期間を経過したときは、同法条により当該不動産を時効によって取得しうる」としている(最判昭46.11.5 民法百選Ⅰ〔第9版〕53事件)。よって、本記述は正しい。参考佐久間(総則)405頁。
我妻・有泉コメ328頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、名誉毀損罪は、公知の事実を摘示した場合でも、成立し得る。刑法この問題の模試受験生正解率 55.3%
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、企業者は、雇用の自由を有し、労働者の思想、信条を理由として雇入れを拒んでも当然に違法ということはできないため、労働者の採否決定に当たり、その思想、信条を調査し、労働者にその思想、信条に関連する事項の申告を求めることも許される。憲法この問題の模試受験生正解率 77.8%結果正解解説最大判昭48.12.12(三菱樹脂事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕9事件)は、企業者が労働者の雇入れに当たりその思想、信条に関連する事項を調査することは許されるかにつき、「企業者が雇傭の自由を有し、思想、信条を理由として雇入れを拒んでもこれを目して違法とすることができない以上、企業者が、労働者の採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることも、これを法律上禁止された違法行為とすべき理由はない」としている。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合、家屋の所有者である賃貸人の地位と転借人の地位が同一人に帰属した場合、転貸借契約の当事者間に転貸借契約を存続させる特別の合意が成立しない限り、転借権は混同により消滅する。民法この問題の模試受験生正解率 61.1%結果正解解説判例は、「家屋の所有権者たる賃貸人の地位と転借人たる地位とが同一人に帰した場合は民法613条1項の規定による転借人の賃貸人に対する直接の義務が混同により消滅するは別論として、当事者間に転貸借関係を消滅させる特別の合意が成立しない限りは転貸借関係は当然には消滅しない」としている(最判昭35.6.23)。よって、本記述は誤りである。参考潮見(プラクティス債総)452~453頁。
中田(債総)496頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、Vの後頸部に割れたビール瓶を突き刺し、Vに重篤な頸部の血管損傷の傷害を負わせたところ、Vは、直ちに病院で手術を受け、一旦は容体が安定したが、医師の指示に従わず、安静に努めなかったため、容体が悪化し、上記傷害による脳機能障害により死亡した。この場合、甲がVの後頸部に割れたビール瓶を突き刺した行為とVの死亡の結果との間には、因果関係はない。刑法この問題の模試受験生正解率 86.8%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、「被害者の受けた……傷害は、それ自体死亡の結果をもたらし得る身体の損傷であって、仮に被害者の死亡の結果発生までの間に、……被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在していたとしても、被告人らの暴行による傷害と被害者の死亡との間には因果関係がある」としている(最決平16.2.17 平16重判刑法1事件)。したがって、本記述において、甲がVの後頸部に割れたビール瓶を突き刺した行為とVの死亡の結果との間には、因果関係がある。よって、本記述は誤りである。参考山口(総)64頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)76~77頁。
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憲法憲法第9条第1項の「国際紛争を解決する手段」としての戦争について、国際法上の用例を尊重し、「国家の政策としての戦争」、すなわち侵略戦争を意味するならば、同条全体により自衛戦争を含めた全ての戦争が放棄されているという結論を導くことはできない。憲法この問題の模試受験生正解率 50.5%結果正解解説憲法9条1項の「国際紛争を解決する手段」としての戦争について、国際法上の用例を尊重し、「国家の政策としての戦争」、すなわち侵略戦争を意味するならば、同項で放棄されているのは侵略戦争ということになり、自衛戦争は放棄されていないことになる。もっとも、この見解に立っても、同条2項の「前項の目的を達するため」にいう「前項の目的」について、戦争を放棄するに至った動機を一般的に指すものと解釈し、同項で戦力の保持が無条件で禁止され、また、交戦権まで否認されていると解釈するならば、同条1項で留保された自衛戦争も事実上不可能となり、同条全体で自衛戦争を含めた全ての戦争が放棄されているという結論を導くことができる。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)57~58頁。
佐藤幸(日本国憲法論)106~107頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)164~168頁。
芦部(憲法学Ⅰ)255~259頁。 -
民法Aが家出をして行方不明になり、その生死が10年間明らかでなかったため、Aについて失踪宣告がされた場合に関して、判例の趣旨に照らした場合、Aが失踪宣告により死亡したものとみなされた時と異なる時に死亡していたことが判明した場合、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、Aの失踪宣告を取り消さなければならない。民法この問題の模試受験生正解率 68.3%結果正解解説失踪宣告を受けた者が生存していること又は失踪宣告により死亡したものとみなされる時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪宣告を取り消さなければならない(民法32条1項前段)。本記述においては、Aは、生死不明となってから7年の期間が経過した時に死亡したものとみなされるところ、これと異なる時に死亡していたことが判明しているから、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、Aの失踪宣告を取り消さなければならないこととなる。よって、本記述は正しい。参考佐久間(総則)26頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)53頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を要求した後、公務員になったが、結局、賄賂を収受しなかった場合、事前収賄罪(刑法第197条第2項)は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 55.8%結果正解解説事前収賄罪(刑法197条2項)は、「公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をした」場合、公務員になったときに成立する。したがって、公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を要求している以上、公務員になった後、結局、賄賂を収受しなかったとしても事前収賄罪が成立する。よって、本記述は誤りである。参考西田(各)527頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)457~458頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと、不起訴となった事実に基づく抑留又は拘禁であっても、そのうちに実質上は、無罪となった事実についての抑留又は拘禁であると認められるものがある場合には、その部分の抑留又は拘禁は憲法第40条の適用対象となり得る。憲法この問題の模試受験生正解率 52.4%結果正解解説判例は、覚醒剤取締法違反の事実につき無罪判決を得た者が、当該被疑事実の取調べが、不起訴となった別の事実に基づく勾留中に不法に行われたとして、その身柄拘束期間についての刑事補償を請求した事例において、「憲法40条は「……抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたとき……」と規定しているから、抑留または拘禁された被疑事実が不起訴となった場合は同条の補償の問題を生じないことは明らかである」としているが、しかし、「憲法40条にいう「抑留又は拘禁」中には、……たとえ不起訴となった事実に基く抑留または拘禁であっても、そのうちに実質上は、無罪となった事実についての抑留または拘禁であると認められるものがあるときは、その部分の抑留及び拘禁もまたこれを包含する」としている(最大決昭31.12.24 憲法百選Ⅱ〔第7版〕129事件)。したがって、抑留又は拘禁の理由となった被疑事実が不起訴となった場合であっても、そのうちに実質上は、無罪となった事実についての抑留又は拘禁であると認められるものがあるときは、その部分の抑留又は拘禁は、同条の適用対象となり得る。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合、自筆証書遺言が数葉にわたる場合でも、一通の遺言書として作成されているときは、その日付、署名、捺印は一葉にされることで足りる。民法この問題の模試受験生正解率 60.1%結果正解解説自筆証書遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない(民法968条1項)。本記述のように、自筆証書遺言が数葉にわたる場合、毎葉ごとに日付、署名及び捺印をしなければならないのかが問題となる。この点につき、判例は、「遺言書が数葉にわたるときであっても、その数葉が一通の遺言書として作成されたものであることが確認されれば、その一部に日附、署名、捺印が適法になされている限り、右遺言書を有効と認めて差支えないと解するを相当とする」としている(最判昭36.6.22 家族法百選〔第2版〕113事件)。よって、本記述は正しい。参考窪田(家族法)465頁。
新基本法コメ(相続)184頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、乙が覚醒剤を密輸することを知りながら、同人に対して覚醒剤購入資金を交付したところ、乙は、これを用いて2回の密輸を行った。この場合、甲には、2個の覚醒剤取締法違反幇助の罪が成立し、これらは併合罪となる。刑法この問題の模試受験生正解率 57.5%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、「幇助罪は正犯の犯行を幇助することによって成立するものであるから、成立すべき幇助罪の個数については、正犯の罪のそれに従って決定される」ところ、「幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法54条1項にいう1個の行為によるものであるか否かについては、幇助犯における行為は幇助犯のした幇助行為そのものにほかならないと解するのが相当であるから、幇助行為それ自体についてこれをみるべきである」としている(最決昭57.2.17 刑法百選Ⅰ〔第8版〕107事件)。したがって、本記述において、甲には2個の覚醒剤取締法違反幇助の罪が成立するが、覚醒剤購入資金を交付する幇助行為は1個であるから、観念的競合(刑法54条1項前段)として科刑上一罪となる。よって、本記述は誤りである。参考西田(総)453~454頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)415頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと、最高裁判所裁判官の国民審査は、一種の国民解職制度であるが、裁判官の任命を完成させる事後審査の意味をも含んでいる。憲法この問題の模試受験生正解率 58.9%結果正解解説判例は、最高裁判所裁判官の「国民審査の制度はその実質において所謂解職の制度と見ることが出来る」とした上で、憲法79条2項と同条3項の字句を照らし合わせてみると、「国民が罷免すべきか否かを決定する趣旨であって、……任命そのものを完成させるか否かを審査するものでない」としている(最大判昭27.2.20 憲法百選Ⅱ〔第7版〕178事件)。したがって、国民審査は、裁判官の任命を完成させる事後審査の意味を含まない。よって、本記述は誤りである。
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民法売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定される。民法この問題の模試受験生正解率 38.6%結果正解解説売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定される(民法573条)。売買契約は双務契約であり、両当事者は、同時履行の抗弁権(同533条本文)を有し、目的物の引渡しについて期限がある場合には、買主の代金支払についても同一の期限を定めるのが通常であると考えられることから、推定規定を設けたものである。よって、本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)87頁。
中田(契約)336頁。
我妻・有泉コメ1242頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、Vの頭部を多数回殴打した結果、恐怖心による心理的圧迫によりVの血圧を上昇させ、Vに脳出血を発生させてVを意識消失状態に陥らせた。甲は、意識を消失したままのVを建材会社の資材置場まで自動車で運搬し、同所に放置して立ち去ったところ、Vは、甲とは無関係な何者かから角材で頭頂部を殴打され、死亡するに至ったが、Vの死因は甲の殴打行為により形成された脳出血であり、資材置場で受けた殴打行為は、既に発生していた脳出血を拡大させ、幾分か死期を早める影響を与えるものであった。この場合、甲の上記殴打行為とVの死亡の結果との間には、因果関係はない。刑法この問題の模試受験生正解率 95.3%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、「犯人の暴行により被害者の死因となった傷害が形成された場合には、仮にその後第三者により加えられた暴行によって死期が早められたとしても、犯人の暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定することができ」るとしている(最決平2.11.20 刑法百選Ⅰ〔第8版〕10事件)。したがって、本記述においても、甲の殴打行為とVの死亡の結果との間には、因果関係がある。よって、本記述は誤りである。参考大塚ほか(基本刑法Ⅰ)71~72頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、労働組合の活動が多様化して組合による統制範囲が拡大していることに加え、事実上組合員の脱退の自由が大きな制約を受けていることからすれば、労働組合の目的の範囲内の活動であっても直ちに組合員の協力義務を肯定することができず、具体的な組合活動の内容・性質、これについて組合員に求められる協力の内容・程度・態様等を比較考量し、組合員の協力義務の範囲に合理的な限定を加えることを要する。憲法この問題の模試受験生正解率 73.8%結果正解解説判例は、労働組合が他の労働組合の闘争支援資金、安保反対闘争により不利益処分を受けた組合員の救援費用等のための臨時組合費の納付を組合員に強制できるかどうかが争われた事例において、「労働組合の活動が……多様化するにつれて、組合による統制の範囲も拡大し、組合員が一個の市民又は人間として有する自由や権利と矛盾衝突する場合が増大し、しかも今日の社会的条件のもとでは、組合に加入していることが労働者にとって重要な利益で、組合脱退の自由も事実上大きな制約を受けていることを考えると、労働組合の活動として許されたものであるというだけで、そのことから直ちにこれに対する組合員の協力義務を無条件で肯定することは、相当でないというべきである。それゆえ、この点に関して格別の立法上の規制が加えられていない場合でも、問題とされている具体的な組合活動の内容・性質、これについて組合員に求められる協力の内容・程度・態様等を比較考量し、多数決原理に基づく組合活動の実効性と組合員個人の基本的利益の調和という観点から、組合の統制力とその反面としての組合員の協力義務の範囲に合理的な限定を加えることが必要である」としている(最判昭50.11.28 国労広島地本事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕145事件)。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合、内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、他の一方の相続権は認められないが、当該他の一方は、特別の寄与の制度により、死亡した一方の財産を取得することができる。民法この問題の模試受験生正解率 60.7%結果正解解説被相続人の配偶者は常に相続人となるが(民法890条前段)、同条の「配偶者」は、戸籍でその存在を確認し得る法律婚の配偶者を指し、内縁配偶者を含まない。また、相続人以外の者であっても、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者に対し、相続財産から分配を受けることを認める制度として、特別の寄与の制度(同1050条)があるが、この制度により相続財産から分配を受けることができるのは、被相続人の親族に限られ(同条1項)、内縁配偶者には認められない。よって、本記述は誤りである。参考窪田(家族法)141頁、444頁。
前田陽ほか(民法Ⅵ)243頁、310頁。
一問一答(新しい相続法)181~182頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、ある犯罪が行われた後、その罪の法定刑に懲役刑のほかに禁錮刑を新たに加える法改正が行われて施行された場合、新法が適用される。(参照条文)刑法 第6条(刑の変更)犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。
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憲法政党が党議拘束に従わない国会議員を懲戒処分に付することは、その効果が政党内にとどまるか否かにかかわらず、国会議員が憲法第43条第1項にいう「全国民を代表する」ことと矛盾抵触することになる。憲法この問題の模試受験生正解率 84.3%結果正解解説国会議員は、全国民の代表であり、支持母体等の具体的指示に法的に拘束されることなく、議会において自己の信念に基づいてのみ発言・表決する(自由委任の原則 憲法43条1項)。他方、政党は国会内で一体として行動するために、その所属議員に対して党議拘束を加えることがある。そこで、同項と党議拘束との関係が問題となるが、国会議員は、所属政党の決定に従って行動することにより国民の代表者としての実質を発揮できるといえるし、また、政党が、党議拘束に従わない国会議員を懲戒処分に付することは、本来その政党により自律的に決せられるべき内部事項である。したがって、懲戒処分の効果が、党からの除名をもって議員資格を喪失させるものであるならともかく、その効果が政党内にとどまるものである限り、党議拘束に従わない国会議員を懲戒処分に付することは、国会議員が同項にいう「全国民を代表する」ことと矛盾抵触しないということができる。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)302~304頁。
佐藤幸(日本国憲法論)462~463頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)62~63頁、108頁。
市川(憲法)251頁。 -
民法共有物の管理者が、共有者間において決定された共有物の管理に関する事項に反してその職務を行った場合、その行為は共有者に対して効力を有しないが、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。民法この問題の模試受験生正解率 63.9%結果正解解説共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならず(民法252条の2第3項)、同項に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない(同条4項本文)。ただし、このような内部事項を知り得ない第三者を保護するため、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができないとされている(同項ただし書)。よって、本記述は正しい。参考平野(物権)364頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)163頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、遺棄罪の保護法益には、生命のみならず身体の安全も含まれ、生命及び身体に対する具体的な危険が発生しない限り、遺棄罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 52.3%結果正解解説参考山口(各)30~31頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)21~22頁。
新基本法コメ(刑法)468~469頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、公務員の地位の特殊性と職務の公共性に鑑みると、これを根拠として公務員の労働基本権に対し必要やむを得ない限度の制限を加えることができるが、当該制限が必要やむを得ない限度か否かを検討するに当たっては、個々の公務員の職務上の地位や職務の内容などの個別的事情を考慮しなければならない。憲法この問題の模試受験生正解率 53.0%結果正解解説判例は、非現業の国家「公務員は、私企業の労働者と異なり、国民の信託に基づいて国政を担当する政府により任命されるものであるが、憲法15条の示すとおり、実質的には、その使用者は国民全体であり、公務員の労務提供義務は国民全体に対して負うものである。もとよりこのことだけの理由から公務員に対して団結権をはじめその他一切の労働基本権を否定することは許されないのであるが、公務員の地位の特殊性と職務の公共性にかんがみるときは、これを根拠として公務員の労働基本権に対し必要やむをえない限度の制限を加えることは、十分合理的な理由があるというべきである」としている(最大判昭48.4.25 全農林警職法事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕141事件)。このように、同判決は、公務員の労働基本権に対する制限が必要やむを得ない限度かどうかを判断するに当たり、個々の公務員の職務上の地位や職務の内容などの個別的事情を考慮しなければならないとはしていない。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)288~291頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)243~244頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、債務者が債権者を害することを知ってした行為について、詐害行為取消請求をするためには、債務者は当該行為時に無資力であれば足り、詐害行為取消権を行使した時点において無資力である必要はない。民法この問題の模試受験生正解率 81.0%結果正解解説判例は、債務者は詐害行為時に無資力であることを要するだけでなく、詐害行為取消権を行使する時においても無資力であることを要し、詐害行為取消権行使時に債務者が資力を回復したときには、詐害行為取消権の行使は認められないとしている(大判大15.11.13)。よって、本記述は誤りである。参考内田Ⅲ366頁。
潮見(プラクティス債総)232頁。
中田(債総)296頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、乙所有の動産に質権の設定を受けた丙の委託により同動産を保管していたところ、乙の求めに応じて、丙に無断で、同動産を乙に対して交付した。この場合、甲には、横領罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 51.4%結果正解解説横領罪の成立には、他人の所有権に対する侵害が必要であり、質権を侵害しても、横領罪は成立しない。判例も、本記述と同様の事例において、横領罪の成立を否定している(大判明44.10.13)。したがって、甲に横領罪は成立しない。よって、本記述は誤りである。参考山口(各)288頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)320頁。
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憲法皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与する場合、一定の場合を除き、国会の議決に基づかなければならないが、ここでの「国会の議決」には、憲法上、衆議院の優越は認められていない。憲法この問題の模試受験生正解率 74.8%結果正解解説憲法8条は、「皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。」と規定している。これは、皇室の財産授受を国会のコントロールの下に置くことによって、再び大きな財産が皇室に集中し、皇室が特定の個人ないし団体と経済的に特別な関係を結ぶことを防止することを目的とする。同条の「国会の議決」には、衆参両院の一致した議決を要し、衆議院の優越は認められていない。よって、本記述は正しい。
なお、皇室経済法は、相当の対価による売買等通常の私的経済行為、外国交際のための儀礼上の贈答、公共のためになす遺贈又は遺産の賜与、年間に一定の価額内の財産の賜与又は譲受については、「その度ごとに国会の議決を経なくても」よいとしている(同2条)。参考芦部(憲法)53頁。
リーガルクエスト(憲法Ⅰ)119頁。
新・コンメ(憲法)64~65頁。 -
民法消費寄託契約は、目的物の引渡しがなければ成立しない。民法この問題の模試受験生正解率 50.2%結果正解解説消費寄託とは、受寄者が代替物である寄託物を消費することができ、寄託された物自体ではなく、これと同種・同等・同量の物を返還することを約束する寄託をいう(民法666条1項)。消費寄託は、通常の寄託と同様、当事者の合意のみで成立する諾成契約である(同657条)。よって、本記述は誤りである。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)285頁、293頁。
中田(契約)556頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、住居の賃貸人が、賃貸借契約が終了したので、直ちに賃借人を追い出すため、同住居に立ち入った場合、賃貸人には住居侵入罪が成立し得る。刑法この問題の模試受験生正解率 81.0%結果正解解説判例は、「住居侵入罪は故なく人の住居又は人の看守する邸宅、建造物等に侵入し又は要求を受けてその場所より退去しないことによって成立するのであり、その居住者又は看守者が法律上正当の権限を以て居住し又は看守するか否かは犯罪の成立を左右するものではない」とし、住居侵入罪の客体である住居が不適法に占有されている場合であっても、同罪の成立を認めている(最決昭28.5.14)。よって、本記述は正しい。参考山口(各)120頁。
西田(各)111頁。
条解刑法407頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、筆記行為の自由は、様々な意見、知識、情報に接し、これを摂取することを補助するものとしてなされる限りにおいては、憲法第21条第1項の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれるといえるから、その制限又は禁止には、表現の自由に制約を加える場合に一般に必要とされる厳格な基準が要求される。憲法この問題の模試受験生正解率 75.7%結果正解解説判例は、一般の傍聴者が法廷でメモを取ることを禁止しながら、司法記者クラブ所属の報道記者に対してはこれを許可していた裁判長の措置の合憲性が争われた事例において、「筆記行為は、一般的には人の生活活動の一つであり、生活のさまざまな場面において行われ、極めて広い範囲に及んでいるから、そのすべてが憲法の保障する自由に関係するものということはできないが、さまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取することを補助するものとしてなされる限り、筆記行為の自由は、憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきであるといわなければならない」とした上で、「筆記行為の自由は、憲法21条1項の規定によって直接保障されている表現の自由そのものとは異なるものであるから、その制限又は禁止には、表現の自由に制約を加える場合に一般に必要とされる厳格な基準が要求されるものではない」としている(最大判平元.3.8 レペタ事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕72事件)。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合、保証が付された債権が譲渡され、主たる債務者に対して債権譲渡の通知がされたときは、保証人に対して債権譲渡の通知がされていなくても、債権の譲受人は、保証人に対し、保証債務の履行を求めることができる。
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刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、A及びBが殴り合いのけんかをしているところにたまたま通り掛かり、「A、もっと頑張れ。」などとAに一方的に肩入れするような声援を送ったところ、その声援を聞いたAは、いっそう犯意を強固にし、更に強度の暴行を加え続けたことにより、Bに鼻骨骨折等の傷害を負わせた。この場合、甲に現場助勢罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 49.2%結果正解解説現場助勢罪(刑法206条)は、傷害又は傷害致死の行為が行われる際、その現場において勢いを助ける行為を処罰対象としている。勢いを助けるとは、本犯の気勢を高め、又は刺激すべき性質の行為をいい、例えば、「やれやれ。」、「もっとやれ。」などの声援がこれに当たる。もっとも、同条が、傷害の現場でなされた助勢行為を処罰する規定である以上、特定の正犯者の犯行を容易にする従犯とは異なる(大判昭2.3.28参照)。したがって、傷害罪又は傷害致死罪(同205条)の現場での声援であっても、双方がけんか状態になっている現場で、一方を加勢するために助勢した場合は、幇助行為であって、同206条に該当しない。本記述では、甲の行為は、既に暴行ないし傷害の故意があったAの犯意を強固にしているから、甲には傷害罪の従犯(同204条、62条1項)が成立し、現場助勢罪は成立しない。よって、本記述は正しい。参考西田(各)47頁。
高橋(各)55~56頁。
井田(各)65~66頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)34~35頁。
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憲法国民と議会とを媒介する組織として発達した政党は、国家意思の形成に事実上主導的な役割を演じており、権力分立制の在り方を機能的に変容させる結果をもたらしたといえる。憲法この問題の模試受験生正解率 84.3%結果正解解説政党は、国民と議会とを媒介する組織として発達してきており、国家意思の形成に際して事実上主導的な役割を演じるに至っている。このような現象は、「政党国家」現象と呼ばれ、権力分立制における伝統的な議会と政府との関係は、政党・与党と野党といった対抗関係に機能的に変容している。よって、本記述は正しい。参考芦部(憲法)299頁。
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民法判例の趣旨に照らした場合、法人は、一般社団法人の役員となることができる。民法この問題の模試受験生正解率 57.3%結果正解解説法人の権利能力は、法令による制限を受ける(民法34条)。一般社団法人の役員の資格について定める一般法人法65条1項は、法人は一般社団法人の役員となることはできないとしている(同項1号)。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(総則)356頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)77~78頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、元妻Aに対する嫌がらせとして、5階建て市営住宅のA居室の出入口に設置された玄関ドアを金属バットで叩いてへこませたが、同ドアは適切な工具を使用すれば損壊せずに取り外しが可能であった。この場合、甲に建造物損壊罪が成立する余地はない。刑法この問題の模試受験生正解率 57.0%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、「建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは、当該物と建造物との接合の程度のほか、当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮して決すべきものであるところ、……本件ドアは、住居の玄関ドアとして外壁と接続し、外界とのしゃ断、防犯、防風、防音等の重要な役割を果たしているから、建造物損壊罪の客体に当たるものと認められ、適切な工具を使用すれば損壊せずに同ドアの取り外しが可能であるとしても、この結論は左右されない。そうすると、建造物損壊罪の成立を認めた原判断は、結論において正当である」としている(最決平19.3.20 刑法百選Ⅱ〔第8版〕79事件)。つまり、同決定は、建造物に接合する物が当該建造物の一部といえるかについて、当該物と建造物との接合の程度のみならず、当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮して判断している。したがって、本記述では、甲に建造物損壊罪(刑法260条前段)が成立する余地がある。よって、本記述は誤りである。参考大谷(講義各)367~368頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)357頁。
条解刑法360頁、854~855頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、法律で一旦定められた財産権の内容を事後の法律で変更した場合には、財産権に対する侵害の程度が強度であることから、かかる財産権の事後的変更が公共の福祉に適合するようにされたものであるかについては、変更の目的が失われる利益を上回るほどに重要であり、また、その目的達成のために必要性があると認められるか否かによって判断すべきである。憲法この問題の模試受験生正解率 55.8%結果正解解説判例は、改正前農地法によって著しい廉価で農地を買い受けられることとなっていた買収農地の旧所有者が、国有農地等の売払いに関する特別措置法及び同法施行令の制定、施行により売払いの対価が時価の7割に増額されたことから、同人が買収の対価相当額での売払いを求めた事例において、「憲法29条1項は、「財産権は、これを侵してはならない。」と規定しているが、同条2項は、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と規定している。したがって、法律でいったん定められた財産権の内容を事後の法律で変更しても、それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り、これをもって違憲の立法ということができないことは明らかである。そして、右の変更が公共の福祉に適合するようにされたものであるかどうかは、いったん定められた法律に基づく財産権の性質、その内容を変更する程度、及びこれを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって、判断すべきである」としている(最大判昭53.7.12 憲法百選Ⅰ〔第7版〕99事件)。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合、遺留分は、相続開始前には放棄することができないが、相続開始後は放棄することができる。民法この問題の模試受験生正解率 49.8%結果正解解説相続開始後の遺留分の放棄は、既に自分に帰属した権利を処分することだから、自由にできると解されている。これに対して、相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生じる(民法1049条1項)。これは、無制限の放棄を許すならば、遺留分権利者が被相続人の圧迫によって遺留分を放棄するよう強要されるおそれがあるため、相続開始前の遺留分の放棄を家庭裁判所の許可にかからしめたものである。したがって、相続開始前であっても、家庭裁判所の許可を受ければ、遺留分を放棄することができる。よって、本記述は誤りである。参考窪田(家族法)579頁。
潮見(詳解相続法)642~643頁。
前田陽ほか(民法Ⅵ)428頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、甲の債務者Aに対する債権をBに譲渡したが、その後、Aに対して譲渡通知をする前に、債務の弁済としてAから金銭を受領した。甲は、同金銭を譲受人Bに渡さず自己のために費消した。この場合、甲には、横領罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 51.4%結果正解解説横領罪は、「自己の占有する他人の物」を客体として、それを「横領した」場合に成立する。そこで、本記述のように、債権譲渡人が、債務者への譲渡通知前に、債務者から当該債権の弁済として金銭を受け取った場合、弁済が譲受人に対する債務の履行であるとして、同金銭が「他人の物」に当たるかが問題となる。判例は、債権譲渡人が、債務者への譲渡通知前に、同人から債権の弁済として受け取った金銭を費消した場合、債権は既に譲渡行為により譲受人に移転し、通知は債務者に対する対抗要件にすぎないから、同金銭は譲受人に帰属し、譲渡人の行為は横領罪を構成するとした原審の判断を是認している(最決昭33.5.1)。したがって、甲には横領罪が成立する。よって、本記述は正しい。参考西田(各)253頁。
昭33最高裁解説(刑事)296~299頁。
条解刑法831頁。
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解答
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憲法憲法第43条第1項の規定する「選挙」には間接選挙も含まれるとする見解によっても、地方議会の議員など既に選挙されて公職にある者が国会議員を選挙する、いわゆる複選制は、被選挙人と選挙人との関係が間接的にすぎるから、同項の規定する「選挙」に含まれないと解されている。憲法この問題の模試受験生正解率 50.2%結果正解解説間接選挙には、選挙人がまず選挙委員を選び、その選挙委員が国会議員を選挙する制度である狭義の間接選挙制と、地方議会の議員など既に選挙されて公職にある者が国会議員を選挙する制度である複選制とがある。そして、憲法43条1項の規定する「選挙」には間接選挙も含まれるとする見解においても、国会議員の選挙において、狭義の間接選挙制は許容されるが、複選制は、被選挙人(代表)と選挙人との関係が間接的にすぎ、もはや公選とはいえないから、同項の「選挙」に含まれないと解されている。よって、本記述は正しい。参考芦部(憲法)276頁。
佐藤幸(日本国憲法論)443~444頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)30~32頁。
渋谷(憲法)474頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、債務の消滅時効期間が経過する前に、債務者が債権者に対し債務の承認をした場合、その債務のために自己の所有する土地に抵当権を設定した物上保証人が、被担保債権について生じた時効の更新の効力を否定することは許されない。民法この問題の模試受験生正解率 74.1%結果正解解説時効期間が経過する前に、債務者が債権者に対し債務の承認をすることは、民法152条1項の「承認」に該当し、時効の更新事由に当たる。もっとも、同153条3項は、「前条の規定による時効の更新は、更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。」としているため、物上保証人が、債務者の承認による時効の更新の効力を否定することができるか否かについて問題となる。この点について、判例は、他人の債務のために自己の所有物件につき根抵当権等を設定した物上保証人が、債務者の承認により被担保債権について生じた消滅時効更新の効力を否定することは、担保権の付従性に抵触し、同396条の趣旨にも反し、許されないという立場に立っている(最判平7.3.10)。したがって、物上保証人が、被担保債権について生じた債務者の承認による時効の更新の効力を否定することは許されない。よって、本記述は正しい。参考佐久間(総則)427~429頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)312頁、316頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、傷害を犯した後、労役場留置の期間を短くする改正法が施行された場合であっても、旧法が適用される。(参照条文)刑法 第6条(刑の変更)犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。刑法この問題の模試受験生正解率 59.2%結果正解解説刑法6条は、遡及処罰の禁止の趣旨を推し進めて、犯罪後に刑の変更があったときは、最も軽い刑によるべきことを定めたものである。遡及処罰の禁止により遡及適用が排除されるものには、主刑又は付加刑自体の加重のみならず、労役場留置期間の延長等も含まれる。判例も、労役場留置の期間の変更については、同条の趣旨が妥当することを理由に「刑の変更」に当たるとして、期間を短くする改正法が施行された場合には、新法が適用されるとしている(大判昭16.7.17)。よって、本記述は誤りである。参考山口(総)416頁。
条解刑法13頁。
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憲法最高裁判所は、憲法第22条第1項の「移転」とは、短期的な移動一般を意味するため、一時的な海外渡航の自由は、同項により保障されるとした。憲法この問題の模試受験生正解率 60.6%結果正解解説判例は、旅券発給拒否処分の憲法適合性が争われた事例において、「憲法22条2項の「外国に移住する自由」には外国へ一時旅行する自由を含む」としている(最大判昭33.9.10 帆足計事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕105事件)。よって、本記述は誤りである。
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民法AB間の契約の終了に関して、AB間の契約が使用貸借契約である場合、貸主Aが死亡したときであっても、当該使用貸借契約は終了しない。民法この問題の模試受験生正解率 61.4%結果正解解説使用貸借は、借主の死亡によって終了する(民法597条3項)。これは、使用貸借が当事者の信頼関係に基づいて行われるものであるためである。これに対し、貸主の死亡の場合、使用貸借はその効力を失わない。したがって、本記述の場合、貸主Aが死亡したときであっても、使用貸借契約は終了しない。よって、本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)145~146頁。
中田(契約)384頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、自己が所有する高額な自転車Aに保険を掛けていたことを思い出し、保険金を詐取して新車を購入しようと考え、Aをハンマーで叩いて修理不能な状態にした。この場合、甲に器物損壊罪が成立する余地はない。刑法この問題の模試受験生正解率 57.0%結果正解解説器物損壊等罪(刑法261条)の客体は、「他人の物」であるから、自己の所有物は同罪の客体にはならない。また、自己の物に保険を掛けていた場合に、その物を損壊したときは他人の物を損壊したとする旨の規定もない(同262条参照)。したがって、本記述では、甲に器物損壊罪(同261条前段)が成立する余地はない。よって、本記述は正しい。参考大谷(講義各)370~371頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)357~358頁。
条解刑法857頁。
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憲法憲法の規範内容が踏みにじられたり不当に変質させられたりしないようにする様々な国法上の工夫は、広く「憲法の保障」といわれるが、その代表的な方法や考え方に関して、憲法第99条で規定される憲法尊重擁護義務の主体として、国民が挙げられていないのは、国民に憲法に対する忠誠を要求することにより、国民の権利自由が侵害されることを恐れた結果であると考えることができる。憲法この問題の模試受験生正解率 44.9%結果正解解説憲法99条は、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と規定しており、憲法尊重擁護義務の主体として国民を挙げていない。そして、同条の主体として国民を挙げていない点について、国民に憲法に対する忠誠を要求することにより、国民の権利自由が侵害されることを恐れた結果であるとする見解などがある。よって、本記述は正しい。参考芦部(憲法)386頁。
佐藤幸(日本国憲法論)57~59頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)400頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権を辞することができるほか、身上監護権又は管理権の一方のみを辞することもできる。民法この問題の模試受験生正解率 55.1%結果正解解説親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる(民法837条1項)。辞任の対象は、親権全部又は財産管理権に限られ、身上監護権のみの辞任は認められない。よって、本記述は誤りである。参考新基本法コメ(親族)269頁。
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刑法判例の立場に従って検討した場合、証人等威迫罪における「威迫」とは、勢力を示す言葉や動作を用いて相手を困惑させ不安感を生じさせることをいうが、それは直接相手と相対する場合に限られず、不安の念を生じさせる文言を記載した文書を送付して相手にその内容を了知させる方法による場合も含まれる。刑法この問題の模試受験生正解率 95.6%結果正解解説証人等威迫罪(刑法105条の2)における「威迫」とは、他人に対し言語挙動によって気勢を示し、不安の念を生じさせる行為をいう。そして、判例は、「威迫」には、「不安、困惑の念を生じさせる文言を記載した文書を送付して相手にその内容を了知させる方法による場合が含まれ、直接相手と相対する場合に限られるものではない」としている(最決平19.11.13 平20重判刑法12事件)。よって、本記述は正しい。参考山口(各)593頁。
条解刑法345頁。
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憲法国政調査権は議院に強制的権限を付与するものではないため、議院は、国政調査のため、刑罰による制裁をもって証人の出頭を強制することはできない。憲法この問題の模試受験生正解率 55.1%結果正解解説憲法62条は、「両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。」と規定し、同条後段は、議院に証人の出頭・証言、記録の提出を求める権限があることを明示している。これを受けて、現行法は、刑事司法手続を通じた処罰によってこの権限に強制力を与えている。すなわち、「各議院から、議案その他の審査又は国政に関する調査のため、証人として出頭及び証言又は書類の提出……を求められたときは、この法律に別段の定めのある場合を除いて、何人でも、これに応じなければならない。」(議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律1条)と定め、さらに、「正当の理由がなくて、証人が出頭せず、現在場所において証言すべきことの要求を拒み、若しくは要求された書類を提出しないとき、又は証人が宣誓若しくは証言を拒んだときは、1年以下の禁錮又は10万円以下の罰金に処する。」と定めている(同7条1項)。したがって、議院は、国政調査のため、刑罰による制裁をもって証人の出頭を強制することができる。よって、本記述は誤りである。参考野中ほか(憲法Ⅱ)143~144頁、152頁。
毛利ほか(憲法Ⅰ)199~200頁。
新基本法コメ(憲法)355頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、代理人が本人の名において権限外の行為をした場合であっても、相手方がその行為を本人自身の行為と信じたときは、本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由がある場合に限り、権限外の行為についての表見代理の規定が類推適用され、本人がその責任を負う。民法この問題の模試受験生正解率 85.4%結果正解解説民法110条は、代理人がその権限の範囲外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、本人は、当該行為について責任を負うとし、権限の範囲外の行為の表見代理について規定している。そして、同条をはじめとする表見代理は、代理権が存在することへの信頼を保護する制度であり、行為を行う者が本人であることへの信頼を保護する制度ではない。したがって、本記述のように、代理人が本人になりすまして本人の名で権限外の行為をしたことにより、取引の相手方が代理人のした行為が本人自身の行為であると信じた場合には、同条の規定を適用することができないとする見解もある。もっとも、判例は、「代理人が本人の名において権限外の行為をした場合において、相手方がその行為を本人自身の行為と信じたときは、代理人の代理権を信じたものではないが、その信頼が取引上保護に値する点においては、代理人の代理権限を信頼した場合と異なるところはないから、本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由がある場合にかぎり、民法110条の規定を類推適用して、本人がその責に任ずる」としている(最判昭44.12.19)。よって、本記述は正しい。参考平野(総則)341~342頁。
新・コンメ民法(財産法)170頁。
昭44最高裁解説(民事)630~631頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、単純遺棄罪の客体は、「老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者」と規定されているが、扶助を必要とする原因として挙げられている「老年、幼年、身体障害又は疾病」は、例示列挙であるから、老年、幼年、身体障害又は疾病の者以外で扶助を必要とする者も、単純遺棄罪の客体となり得る。刑法この問題の模試受験生正解率 52.3%結果正解解説単純遺棄罪(刑法217条)の客体は、「老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者」であり、これらの扶助を要する原因は制限列挙であると解されている。したがって、老年、幼年、身体障害又は疾病の者以外で扶助を必要とする者は、単純遺棄罪の客体となり得ない。よって、本記述は誤りである。
なお、この点については、保護責任者遺棄等罪(同218条)の客体についても同様に解されている。参考山口(各)32頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)19~20頁。
新基本法コメ(刑法)468頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、普通殺人罪と別個に尊属殺人罪という刑罰を加重する特別な罪を設けるその目的自体は、尊属に対する尊重報恩という社会生活上の基本的道義の維持として、合理性が認められるが、刑罰加重の程度が極端であって、立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化し得べき根拠を見いだし得ないときは、その差別は著しく不合理なものとして違憲である。憲法この問題の模試受験生正解率 90.2%結果正解解説判例は、実父を殺害し、削除前の刑法200条の尊属殺人罪で起訴された者に関する刑事事件につき、同条が憲法14条1項に反しないかが問題となった事例において、刑法200条の立法目的は、尊属殺を特に禁圧するためであり、「尊属に対する尊重報恩は、社会生活上の基本的道義」であるから、「このような自然的情愛ないし普遍的倫理」を維持しようとするために、尊属殺という特別の罪を設け、刑罰を加重すること自体は直ちに合理的な根拠を欠くものとはいえず違憲ではないが、「加重の程度が極端であって、……立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化しうべき根拠を見出しえないときは、その差別は著しく不合理なものといわなければならず、かかる規定は憲法14条1項に違反して無効である」としている(最大判昭48.4.4 尊属殺重罰規定判決 憲法百選Ⅰ〔第7版〕25事件)。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合、建物建築工事請負契約において、注文者と元請負人との間に、契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定があり、当該契約が中途で解除された場合であっても、元請負人から一括して当該工事を請け負った下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したときは、当該出来形部分の所有権は下請負人に帰属する。民法この問題の模試受験生正解率 76.1%結果正解解説判例は、「建物建築工事請負契約において、注文者と元請負人との間に、契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合に、当該契約が中途で解除されたときは、元請負人から一括して当該工事を請け負った下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても、注文者と下請負人との間に格別の合意があるなど特段の事情のない限り、当該出来形部分の所有権は注文者に帰属すると解するのが相当である」としている(最判平5.10.19 民法百選Ⅱ〔第8版〕69事件)。よって、本記述は誤りである。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)257頁。
中田(契約)518頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、飲食店Aにおいて飲食後、同店従業員乙から飲食代金の請求を受けたところ、乙を脅迫して当該請求を断念させようと考え、乙に対し反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫を加え、同脅迫に畏怖した乙は、飲食代金の請求を一時断念した。この場合、甲に恐喝罪が成立することはない。刑法この問題の模試受験生正解率 69.9%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、「原裁判所が、被告人が一審判決判示の脅迫文言を申し向けて被害者等を畏怖させ、よって被害者側の請求を断念せしめた以上、そこに被害者側の黙示的な少くとも支払猶予の処分行為が存在するものと認め、恐喝罪の成立を肯定したのは相当である」として、恐喝罪(刑法249条2項)の成立を認めている(最決昭43.12.11 刑法百選Ⅱ〔第8版〕62事件)。同決定は、恐喝罪における処分行為の内容として、必ずしも積極的な処分行為は必要なく黙示的な処分行為で足りるとしている。本記述では、乙は少なくとも黙示的な支払猶予の処分行為を行っているといえる。したがって、甲には恐喝罪が成立し得る。よって、本記述は誤りである。参考西田(各)244~245頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)271~272頁。
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-
憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、国民が最高裁判所の法解釈を踏まえて自己の行動を定めることは当然であるから、憲法第39条前段の遡及処罰の禁止の規定は、行為当時の最高裁判所の判例が示す法解釈に従えば無罪となるべき行為をした者を、判例変更後の法令解釈に基づき処罰してはならないことを要求している。憲法この問題の模試受験生正解率 64.3%結果正解解説判例は、行為当時は最高裁判所の判例上適法とされた行為について、判例変更をして処罰をすることが憲法39条前段に違反するかが争われた事例において、「行為当時の最高裁判所の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべき行為を処罰することが憲法39条に違反する旨をいう点は、そのような行為であっても、これを処罰することが憲法の右規定に違反しない」としている(最判平8.11.18 平8重判刑法2事件)。したがって、同条前段の遡及処罰の禁止の規定は、行為当時の最高裁判所の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべき行為をした者を、判例変更後の法令解釈に基づき処罰してはならないことまでを要求しているわけではない。よって、本記述は誤りである。参考長谷部(憲法)279頁。
市川(憲法)197頁。 -
民法委任による代理人が適法に選任した復代理人が、代理行為をするに当たり金銭その他の物を受け取ったときは、本人に対し直接これを引き渡す義務を負う。民法この問題の模試受験生正解率 45.9%結果正解解説復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し義務を負う(民法106条2項)。したがって、委任による代理人が適法に選任した復代理人は、代理行為を行うに当たって受け取った金銭その他の物を直接本人に引き渡す義務を負う。よって、本記述は正しい。参考佐久間(総則)244~245頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)200~202頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、電子計算機損壊等業務妨害罪における「人の業務に使用する電子計算機」には、全ての公務に使用される電子計算機を含む。刑法この問題の模試受験生正解率 88.8%結果正解解説電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2第1項)にいう「人の業務に使用する電子計算機」とは、全ての公務に使用される電子計算機を含むと解されている。電子計算機による情報処理の業務が強制力を行使する権力的公務であることを想定し難いからである。よって、本記述は正しい。参考西田(各)143~144頁。
高橋(各)212頁。
条解刑法724頁。
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解答
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憲法憲法は、地方公共団体の長、その議会の議員につき、当該地域の住民による直接選挙を要請しているが、地方公共団体にその議事機関としての議会を設けることは要請していないため、町村については、条例で、議会を置かず、選挙権を有する者の総会、いわゆる町村総会を設けることができる旨を法律で規定することは、憲法に反しないといえる。憲法この問題の模試受験生正解率 21.6%結果正解解説憲法93条は、地方公共団体に議事機関として議会を設置すること、議会が住民の直接選挙する議員によって構成されるべきことを要請している。したがって、同条は、議事機関として議会を設置することも要請している。よって、本記述は誤りである。
なお、地方自治法は、町村は、条例で、住民の選挙による議員からなる議会(同89条)を置かず、選挙権を有する者の総会(町村総会)を設けることができるとしている(同94条)。町村総会は、より住民自治の原則に適合するものであるから、憲法93条1項にいう議事機関としての「議会」に当たると解されている。参考市川(憲法)375~376頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)426頁。 -
民法債務者Aは債権者BのためにAの所有する不動産甲に抵当権を設定し、その旨の登記がされた後、Aは甲をCに譲渡し、Cへの所有権移転登記がされた。この場合に判例の趣旨に照らした場合、その後、AはBに被担保債務を弁済し、甲に対するBの抵当権が消滅したが、設定登記はそのままになっていたところ、これをA及びBの合意で、BのAに対する新たな貸付債権の担保として流用することとした場合であっても、Cは、甲に対するBの抵当権設定登記の抹消登記手続を請求することができる。民法この問題の模試受験生正解率 70.3%結果正解解説弁済によっていったん消滅した抵当権の登記を他の同額の債権の担保のために流用することの可否について、流用までに現れた正当な利害関係のある第三者(第三取得者、後順位抵当権者等)に対しては流用による抵当権の対抗力を否定するというのが判例の立場である(大判昭8.11.7、最判昭49.12.24参照)。したがって、本記述において、登記の流用の前に甲を買い受け、所有権移転登記をしているCは、正当な利害関係のある第三者に当たるので、Bの抵当権設定登記の抹消登記手続を請求することができる。よって、本記述は正しい。参考内田Ⅲ480頁。
道垣内(担物)137~139頁。
松井(担物)21~23頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、外国人Aは、外国において日本人Bに対し、外国人Xを殺害するよう唆し、その旨決意したBが、日本国内においてXを殺害した。この場合、Aには日本の刑法は適用されないから、Aは殺人罪の教唆犯として処罰されない。刑法この問題の模試受験生正解率 76.6%結果正解解説教唆犯の犯罪地については、正犯行為及びその結果発生場所、教唆行為の場所が含まれると解されている。判例も、幇助の事例であるが、幇助行為が国外、正犯行為が国内で行われた覚醒剤輸入罪の事例において、幇助行為をした者を国内犯としている(最決平6.12.9 平6重判刑法1事件)。したがって、日本国内においてBがXを殺害しているから、Bを教唆したAにも日本の刑法が適用され(同1条)、Aは殺人罪の教唆犯として処罰される。よって、本記述は誤りである。参考高橋(総)51頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)462頁。
大コメ(刑法・第3版)⑸563頁。
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憲法最高裁判所は、裁判所法第3条第1項にいう「法律において特に定める権限」である客観訴訟の裁判をするに当たって違憲審査権を行使したことがあるが、非訟事件の裁判をするに当たって違憲審査権を行使したことはない。憲法この問題の模試受験生正解率 69.0%結果正解解説最高裁判所は、主観訴訟以外の「法律において特に定める権限」(裁判所法3条1項)である客観訴訟の裁判をするに当たって違憲審査権(憲法81条)を行使している。例えば、公職選挙法における選挙無効訴訟(同204条、205条)において、議員定数の不均衡が争われた場合(最大判昭51.4.14 憲法百選Ⅱ〔第7版〕148事件等)や、地方公共団体の住民が提起する住民訴訟(地方自治法242条の2)において、地方公共団体の公金支出等の政教分離原則違反が争われた場合(最大判昭52.7.13 津地鎮祭事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕42事件等)において、最高裁判所は違憲審査権を行使している。また、近年では、最高裁判所は、非訟事件の裁判をするに当たり、違憲審査権を行使している。例えば、最高裁判所は、家事審判手続における特別抗告を受けて、婚外子法定相続分差別規定を違憲としている(最大決平25.9.4 憲法百選Ⅰ〔第7版〕27事件等)。したがって、最高裁判所は、客観訴訟の裁判のほか、非訟事件の裁判をするに当たっても違憲審査権を行使したことがある。よって、本記述は誤りである。参考市川(憲法)332頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)349頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、Aからその所有する建物を賃借しているBが増築をした場合、当該増築部分が取引上の独立性を有しないときは、Bは、増築についてAの承諾を得ていたとしても、当該増築部分の所有権を取得しない。民法この問題の模試受験生正解率 85.5%結果正解解説所有権の対象となるには、その物が独立性を有していることが必要である。判例は、本記述と同様の事例において、当該増築部分に独立性がないため、賃借人は当該増築部分の所有権を取得しないとしている(最判昭44.7.25 民法百選Ⅰ〔第8版〕73事件)。よって、本記述は正しい。参考松井(物権)185~186頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)149~150頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、けんか闘争は、ある瞬間においては、正当防衛を行っているように見えることがあっても、全般的に見れば、闘争者双方が攻撃及び防御を繰り返す一団の連続的闘争行為であり、法律秩序に反する行為であるから、正当防衛が成立する余地はない。刑法この問題の模試受験生正解率 66.8%結果正解解説判例は、当初、けんか闘争について、いわゆる「喧嘩両成敗」の考え方によって正当防衛の成立を否定していたが(大判昭7.1.25など)、その後、正当防衛が成立する余地を認めている(最判昭32.1.22 刑法百選Ⅰ〔初版〕39事件)。例えば、手拳で殴り合っていたところ、突然一方がナイフを持って切り掛かってきた場合のように、闘争を全体的に観察し、局面が変わったような場合には、正当防衛の要件を満たし得ると解されている。したがって、いわゆるけんか闘争における相手方に対してした暴行行為について、事態を全体的に観察した場合、正当防衛が成立する余地がある。よって、本記述は誤りである。参考西田(総)172頁。
高橋(総)314~315頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)199~200頁。
大コメ(刑法・第3版)(2)590~591頁、593~594頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、憲法は、第94条によって各地方公共団体に条例制定権を認めているものの、地域によって差別が生じることまでも認めているものではないから、当該条例によって生じる地域差の故をもって、憲法第14条に反し違憲であると主張することができる。憲法この問題の模試受験生正解率 90.2%結果正解解説判例は、条例による地域的取扱いの差異が、憲法14条1項に反しないかが争われた事例において、「憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。それ故、地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあっても、……地域差の故をもって違憲ということはできない」としている(最大判昭33.10.15 憲法百選Ⅰ〔第7版〕32事件)。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合、解除条件付売買契約における買主の占有は、所有の意思をもってする占有であるが、現に解除条件が成就して当該売買契約が失効すれば、その占有は所有の意思をもってする占有ではなくなる。民法この問題の模試受験生正解率 66.7%結果正解解説判例は、「売買契約に基づいて開始される占有は、当該売買契約に、残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が附されている場合であっても、民法162条にいう所有の意思をもってする占有であるというを妨げず、かつ、現に右の解除条件が成就して当該売買契約が失効しても、それだけでは、右の占有が同条にいう所有の意思をもってする占有でなくなるというものではないと解するのが相当である」としている(最判昭60.3.28 昭60重判民法2事件)。よって、本記述は誤りである。参考論点体系判例民法(1)506頁。
新版注釈民法(7)50頁。
新・コンメ民法(財産法)373頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、支払督促制度を悪用して乙の財産を不正に差し押さえるなどして金銭を得ようと考え、乙を債務者とする内容虚偽の支払督促を簡易裁判所に申し立て、乙宛ての支払督促正本、仮執行宣言付支払督促正本を送達してきた郵便配達員に対し、乙を装い、甲を乙と誤信した同郵便配達員から支払督促正本等の交付を受け廃棄した。甲は、当初から乙宛ての支払督促正本等を何らかの用途に利用するつもりはなく速やかに廃棄する意図であった。この場合、甲に詐欺罪が成立することはない。刑法この問題の模試受験生正解率 69.9%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、詐欺罪の成立のためには、故意のほか不法領得の意思が必要であるとする見解に立つことを前提に、「郵便配達員を欺いて交付を受けた支払督促正本等について、廃棄するだけで外に何らかの用途に利用、処分する意思がなかった場合には、支払督促正本等に対する不法領得の意思を認めることはできないというべきであり、このことは、郵便配達員からの受領行為を財産的利得を得るための手段の一つとして行ったときであっても異ならない」としている(最決平16.11.30 刑法百選Ⅱ〔第8版〕31事件)。したがって、乙宛てに送達された支払督促正本等を廃棄するために、乙に成り済まして郵便配達員から同正本等を受け取った甲には不法領得の意思が認められず、詐欺罪は成立しない。よって、本記述は正しい。参考山口(各)202頁。
高橋(各)243~244頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)149頁。